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陰陽五行説(三)-五行説の成立

ここでは五行説の成立について説明する。

例によって、詳しいことは原理の記事で説明するが、五行説の中で大きな影響力を誇る中心的な原理であり、五行の相互関係を規定する理論であるところの相克説、土王説、相生説の成立を終着点として、その展開を追っていく。

五行説の発生

五行説と聞いて、まずそもそもなぜ五なのかという疑問が出るだろう。

これは平岡禎吉が述べているように、四方と中央を祀る殷代以降の五方信仰から出たものであるという考えが有力だろう。また「春秋左伝(BC7C-BC3Cごろまでの歴史が書かれた書物)」や卜辞(卜占のために骨に刻んだ殷代の文)に、五が付くものが頻出することから、五は神聖な数として扱われていた、という解釈も、これに関連するものとして考えることができる。

そしてその五という数を用いて、生活上で重要なものの象徴を選んで生まれたものが、水・火・金・木・土の五材である。

これは生活の基本的な構成物質として成立した。「春秋左伝」の「天、五材を生じ、民ならびにこれを用う。ひとつも廃すること不可也」また「尚書(書経のことで最古の政治史 成立年代は不明)」の「水火は、百姓の飲食するところなり。金木は、百姓の興作するところなり、土は、万物の資生するところなり。これ人の用となす。」という記述は、その性質をよく表している。またここから、五材が相互関係も循環的思想も備えていないことも読み取ることができる。

相互関係の不備については、五行に関する最古の記述である「書経洪範篇(戦国時代BC403-BC221)」の「五行。一に曰く水、二に曰く火、三に曰く木、四に曰く金、五に曰く土。水はここに潤下(流れて潤す)し、火はここに炎上し、木はここに曲長(曲がったり真っ直ぐになったりする)し、金はここに従革(加工されて形が変化する)、土はここに稼穡(カショク 穀物を収穫する)する」にも見えるように、初期の五行においても引き継がれており、五行の前段階としての五材の存在が推測できる。

またこの記述では五材と比べて、それらの運動的特性を抽出したものとなっていることが読み取れ、この抽象化が五材と五行の差異といえるだろう。

五行の行の意味については原理の部分で詳しく説明するが、「呂氏春秋(戦国時代BC403-BC221)」に書かれているように「行はその数を行うなり。その数を行うとは、その理を巡る也」といった運動的循環的な性格のことを指すとされる。

五行説の展開

「墨子(戦国時代から秦BC403-BC206)」に「木は火を生じ、火離然ゆ。火の金を溶かすは火多ければ也。金炭を曝すは金多ければ也。之を合し水と成し、木は土を離く。」という記述があり、ここにおいて循環的な相互関係、相剋説の萌芽を見ることができる。また「孫子」における「五行に常勝なく、四時に常位無し」の記述も、これに近いものと解釈できる。

五行説の主要原理の一つであるところの、相克説の確立については、鄒衍(スウエン BC3Cごろの陰陽家)の提唱した五徳終始説(終始五徳説)でなされる。これは、王朝の興隆と衰退は五行の相克関係に従って行われるとして、前王朝と相克関係にある王朝がその国を治め、そこでは五行の徳に則った政治をすべきというものである。

これを改良した陰陽主運説によって、木と火を陽に金と水を陰に配当することになり、ここに至って初めて陰陽論と五行説が結合することになった。以後この結合は現在に渡って引き継がれている。

この陰陽主運説を基盤に、月毎にすべき政治的な行為を定める月令や、土を他の四つよりも上位に置く土王説といった、五行説を構成する重要な思想が生まれることになった。

土王説については五行説の主要な原理の一つであり、これは陰陽主運説から引き継ぎ発展させた四季と四方の配当との関係の中で、「淮南子〔劉安(BC179-BC122)の編書〕」や「春秋繁露〔董仲舒(BC179-BC104)の著作〕」に至って完成をみた。

五行説の主軸となるもう一つの原理である相生説についても、この「淮南子」と「春秋繁露」で言及されており、これは「淮南子墜形訓」にて、「土錬れて、木を生じ木錬れて火を生じ、火錬れて雲を生じ、雲錬れて、水を生じ水錬れて土を生ず。」という記述から読み取れる。

そして劉歆(AC1Cごろの学者)が土王説と相生説を現在の形に整備し、ここにおいて相克説、相生説、土王説の五行説の三大原理が出揃うこととなった。

これらの動きと並行して、またそれ以後も、干支や五常など様々なものを陰陽五行説に配当するという動きが続く。が、その展開の説明は五行説の成立という本旨から外れてしまうため、それについては立ち入らず、このあたりで終わりとする。後の記事でまた詳しく説明しようと思う。

 

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