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易(四)-易の原理-八卦・六十四卦

前回の記事では(1)単純化の過程と陰と陽について説明した。

というわけで、この記事では(2)再構築(3)類型の分類の過程と、八卦と六十四卦について説明する。

易の原理-八卦

古代中国の思想家たちは、事物を陰か陽かだけで表すというのは単純が過ぎるために、これらの概念を三つ組み合わせることで八つの類型を構築し、それぞれを事物に当てはめた。

この八つの類型が八卦(ハッカ、ハッケ)であり、後述の六十四卦と対応して小成の卦とも呼ばれるもので、これ単体でも様々な習俗に入り込んでいる非常に重要な概念と言える。

八卦については上述の定義でも充分であるので以下は飛ばしてもらって結構だが、私流の統一的な理解のために(2)の言葉に合わせて説明すると、事物を単純化することで得られた陰と陽、これらを三つ使用して事物の性質を再構築することで作られた八つの概念を、類型として成立させたという説明になる。

これを水を例にして説明すると、まず言葉では言い切れないほど複雑多様な性質をもつ水というものを、極限まで単純化して陰陽という概念を抜き出した(単純化過程)、つまり水から切り離したこの概念を三つ重ねて再び水を表す形になるように再構築し、その形を一つの類型として成立させたということである。分かりにくくて申し訳ない限りであるが、今後改善するつもりであるので、ご容赦いただきたい。

さて、何はともあれ上述の手順で得られた八つの類型を、八卦(ハッカ、ハッケ)と呼び、これは陰と陽を重ねた形を卦(ケ、カ)と呼ぶことに起因し、つまり卦の種類が八つあるので八卦ということである。

また卦における一つ一つの陰と陽は爻と呼ぶ。卦と爻については重要単語であるので、必ず覚えておく必要がある。

まとめると、八卦は全ての事物を八つの類型で示すものであり、爻を三つ使用することにより陰と陽のどちらか一つで示すよりも、より詳しく事物の性質を示すことができるようになった。

易の原理-八卦の象

それぞれの卦に当てはまる事物のことを象(ショウ)と言い、これは再構築した類型を象るという意を含んでいる。

八卦とその主な象は以下の通りである。

〔括弧内は卲雍(ショウヨウ AC1011~AC1077)が唱えた易である先天易・伏羲の易の象で、括弧外は後天易・文王の易のものであり、易経では後者が使われている〕

乾 八卦乾(ケン) 西北(南) 剛健 一(一)
兌兌(ダ)  沢  三女・若い女 西(東南)  悦ぶ 八(二)
離離(リ) 火・光 次女・中年の女 南(東) 付く 六(三)
震震(シン) 長男・老いた男 東(東北) 動く 三(四)
巽巽(ソン) 風・木 長女・老いた女 東南(西南) 入る 四(五)
坎坎(カン) 次男・中年の男 北(西) 険・陥る 五(六)
艮艮(ゴン) 三男・若い男 東北(西北) 止まる 七(七)
坤坤(コン) 西南(北) 柔順 二(八)

天(乾)と地(坤)は空間的な対比、沢(兌)と山(艮)は地理的な対比、火(離)と水(坎)は性質的な対比、雷(震)と風(巽)は自然現象の対比といったように、八卦はその逆の爻を持つ八卦(例:離坎)と対比関係にある。

この関係は互いに消長し合っているわけではなく、むしろ助け合うような関係にあり(例:火と水は助け合い煮炊きをする)、この関係によって万物は形成される(これについては八卦は陰陽で作られているので、結局のところ陰と陽により形作られることになるわけだが、八卦の象で考えることで形成の具体的なイメージを想起しやすいだろう)。

易の原理-八卦の原理

卦の解釈のときや占筮の際に重要になる、八卦の哲学原理について箇条書きで説明する。

八卦という概念の理解においては重要ではないので、読み飛ばしてもらって占筮をする際に読むことを推奨する。

・初爻はその卦の卦義を司るとされ、中爻(八卦のみ)はその卦の主である。

・八卦の中で奇数画のものは陽卦といい、偶数画のものは陰卦という。

詳しくは占筮法の記事で説明することだが、八卦を数字で換算したときに奇数のものを陽卦で偶数のものを陰卦というように考えても良い。

また一陽二陰の陽卦では一陽が卦の主体となり、二陽一陰の陰卦では一陰が卦の主体となる。

易の原理-八卦まとめ

八つの類型を作ることによって、陰と陽よりも詳細に事物を捉えることが出来るようになったが、現実の事物は複雑で相互に関係し合っているため、そういった性質を含めた万物を表すというに八卦ではまだ大掴み過ぎた。

そこで作られたものが、八の二乗である六十四の類型から構成される六十四卦である。

易の原理-六十四卦

六十四卦は八卦を重ねて、つまり卦を構成する爻の数を六つにした卦であり、六十四卦の基本的な構造はその数以外はほぼ八卦と同じである。だからか、八卦である小成の卦と対応して大成の卦とも呼ばれる。

六十四卦の最大の利点は、事物を表す類型の数を六十四まで増やすことができたという点であり、爻の数の増加以外は八卦との違いがあまりないため、八卦の原理を理解していれば六十四卦を理解することは簡単だろう。

つまり八卦が八つの類型を示すものだったのに対し、六十四卦は全ての事物の六十四の類型を示すものであり、爻の増加により事物の詳細な性質のみならず、その動き、変化を表すことが可能となった。

余談だが、より詳しい情報を盛り込んだ状態での万物の統一的な認識を目指し、六十四の二乗で作った四千九十六の類型を表す四千九十六卦というものも存在したようだが、煩雑過ぎて廃れてしまっているおり、一般的にはこの六十四卦を易の卦の最終形として扱う。

易の原理-六十四卦の構成と原理

ここでは六十四卦の構成と原理について説明する。

具体的な事例があった方が分かりやすいと思うので、六十四番目の卦である未済未済を例にとって説明していく。

まず一つ目の構成要素としては、六十四卦を六つの爻を三つずつでまとめた形(つまり八卦)に分けるというもので、それぞれ上のものから上卦(ジョウカ 外卦ともいう)と下卦(カカ 内卦ともいう)という。

未済未済の場合は上卦は離離、下卦は坎坎ということになり、六十四卦の全体的な変化や認識を解釈する際にこれらを使うことが多い。

また卦名を表すときに、上卦と下卦それぞれの自然現象における象(天や火)を使って表すことも多く〔未済の場合は火水未済(カスイビセイ)〕、六十四卦において二つの八卦は卦の全体的な把握を司るとも言えるかもしれない。

次に二つ目の構成要素としては、六十四卦を六つの爻に分けるというもので、このそれぞれを爻位と呼び、下の爻から順に初爻、二爻、三爻、四爻、五爻、上爻と読む。

また一番下の位が陰ならば初六、上って六二、六三、六四、六五、一番上の位が上六と読み、陽の時は六が九に代わる、未済未済の場合は初六陰、九二陽、六三陰、九四陽、六五陰、上九陽になる。陰を六、陽を九と表す理由は次の占筮法で多少説明するが、詳しい説明は(他の分野の知識が必要なので)別の機会にするつもりであるので、気になる人は待っていてもらいたい。

この六つの爻は、その六十四卦に当てはまる事物の性質や変化、動きを詳細に示すものであるが、六十四卦がこの爻で構成されている以上あらゆる部分の解釈に影響を及ぼすため、非常に重要な要素でこれらの原理を把握しておかないと六十四卦の正しい解釈は難しいだろう。

まとめると、六十四卦は二つの八卦と六個の爻の構成要素に分けることができ、この二つの構成要素の原理を以って、六十四卦の解釈が行われるということになる。

上卦と下卦に関しては文章という形での説明は必要ないくらい原理らしいものはないのだが、爻に関してはいくつかの原理があるため簡単な説明をしていく。

易の原理-爻の原理

というわけで爻についての主な原理を箇条書きで説明していく。

またここでも例に六十四番目の卦である未済未済をとる。

・爻位には社会的地位を当てはめることができ、初爻から順に庶民、士、大夫、公卿、天子(君主)、隠退した天子という位になる。

・偶数(陰)の爻位に陰があるとき、または奇数(陽)の爻位に陽があるときをといい、逆に陰の爻位に陽があるとき、または陽の爻位に陰があるときを不正という。未済未済の場合は全部不正になる。

 ・上卦と下卦に分けたとき、自分と同じ位にいる爻同士(初爻と四爻など)は関係し合う。

この二つの爻が陰と陽の状態を正応また応じると呼び、互いに助け合う関係になるが、逆に陰または陽同士の状態のときは不応(敵応)と呼び反発し合う関係になる。未済未済の場合は六爻ともに正応になる。

また中爻と呼ばれる二爻と五爻が正応している状態を中正と呼び、最上の関係と呼ばれる(二爻が陰、五爻が陽だと尚更良い)。

・隣り合う二爻の関係を比と言い、これは互いに助け合う関係であるが、応の関係よりも力は弱い。

・隣り合う二爻の上の爻と下の爻において、上の爻が下の爻に乗る、下の爻が上の爻を承けると言い、陰爻が陽爻を承けることは良いとされ、逆に陰爻が陽爻に乗ることは良くないとされる。

主な原理としては以上の通りである。

実際に六十四卦の解釈をする際は、これら爻の原理に加えて上卦と下卦の八卦についても気を配りながら、卦辞爻辞の整合性を保ちつつ意味のある文章に解釈しなければならないが、そもそも万物を六十四個の類型で表しているのだから、含蓄に富み過ぎるのも当然のことであり、統一的な解釈ができるというだけで古代中国の思想家たちの傑物さが推し量れるというものだろう。

八卦・六十四卦-まとめ

事物の単純化した概念である陰と陽を三つや六つ組み合わせることで、事物を観念的に再構築をし、同時に類型化をも成し遂げた。

こうして森羅万象を平易な原理に基づく記号で表すことに成功した古代中国の思想家たちは、いよいよ生きるための指針を得る段階に至る。

 

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